自筆証書遺言の要件緩和(自筆証書遺言が使いやすい制度になりました。)

こんにちは木村です。

たまには行政書士らしく、自筆証書遺言の要件の緩和についてのお話しをします。

 

遺言って、実はいくつか種類があって、要件が民法(のおしりのほう、相続法のあたり)で定められています。

これらの中でも一般的に用いられるのは、たいてい公正証書遺言か自筆証書遺言の制度です。どの制度の遺言で作っても、それが正しい方式であれば有効で、この制度のほうが優先するとかいう優劣はありません。なんの遺言であれ、複数ある場合にその中身が抵触していれば、その抵触部分は後に作ったものが優先します(民法第1023条)。

→どの種類なのかが重要ではなく、作った日にちの先後が重要ということです。ちなみに遺言の要件として日付が求められるものが多いのは、この作成の前後がごっちゃにならないようにするためです。

 

さて、一般的に公正証書遺言か自筆証書遺言が多いとはいえ、専門家の多くは公正証書遺言をより強くお勧めするでしょう。これは、作成段階で公証人という専門家がかかわってくれる(しかも遺言書の原本が公証役場に保管される)ため、無効な遺言となる可能性が自筆証書遺言と比較して格段に低いからです。多少の費用や手間こそかかりますが、せっかく遺言を残すのであれば、確実な方法を選んだほうが良いという判断ですね。中途半端な遺言はむしろ争いのもとになりますし。

 

ただ、自筆証書遺言にも、遺言者一人だけで作れるというお手軽さの部分で利点があります。特に今の時代はインターネットで簡単に情報を得られるので、以前よりは無効な遺言となる可能性も減ってきているのではないでしょか。

実は、今、民法全体が新しい時代に合致するように変わっていく過渡期なのですが、この自筆証書遺言の要件についても改正があり、これまでよりもお手軽な制度として、平成31年1月13日から既に運用されているのです。

 

比較のために、まずはこれまでの条文と要件を見てみましょう。

民法第968条

第1項:自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

これを分解すると、以下のようになります。これらが自筆証書遺言の要件です。

全文の自書(☆ポイント☆)

日付の自書

氏名の自書

→いずれも自書、つまり自分の手で書くことが求められていますね。カーボン紙ならいいとかペンネームでもいいとかいろいろな判例がありますがここでは割愛します。

押印

→認印でもOKです(条文に書いていないので)。ただ、実印のほうが真正は担保されますね。

上記の要件を満たさないと自筆証書遺言は無効です。ちなみに、間違えた際などの訂正の仕方も指定があるのでご紹介しておきます。

第2項:自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

さて、今回の要件の緩和というのは、①の部分です。

遺言に記載する内容のうち、「財産目録」については自書でなくてもよくなったのです。

これまでは、例えば「別紙財産目録記載の記載の預貯金は○○に相続させる」などと書いたうえで別紙の部分で預貯金や土地などの特定を手書きでしなければならなかったのが、今回からはパソコンで作った書類であったり、通帳のコピーや登記事項証明書でよくなりました。大分負担が軽くなりますね。ただ、新しい制度の財産目録にも署名と押印は求められていますのでご注意ください。(目録が両面にある場合は、その両面に署名捺印をすることになります。)

さらに、現時点(平成31年1月28日)ではまだなのですが、自筆証書遺言を安い手数料のみで法務局が預かってくれる制度も今後始まる予定です(追記:2020年7月10日からみたいです。)。この制度は、これまで紛失のリスクも高かった自筆証書遺言を安全な場所で保管できる他にも、検認という裁判所での手続きが不要になるというメリットがあります。

残される相続人のことを考えるとなかなかに手を出しにくかった自筆証書遺言ですが、これらの改正により使いやすい制度になりますね。

改正後の条文は以下の通りです。

第968条
第1項:自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
第2項:前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
第3項:自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

制度の詳細については法務省のHPをご参照ください。

自筆証書遺言に関する見直し

http://www.moj.go.jp/content/001263487.pdf

自筆証書遺言に関するルールが変わります。

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00240.html

民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00222.html

では、今回はこれくらいで。